SALVAGE YOU

cinema staff SALVAGE YOU歌詞
1.奇跡

作詞:三島想平
作曲:cinema staff

細長い坂を駆けた。重ね着のコートを脱いで駆け抜けた。

夕暮れの帰り道で、独り言をつぶやいている。

君のいない街に初めての季節。

伝え損ねたこと、もう覚えていないや。

茜色に染まるから、今日も明日もその思い出も。

奇跡はいらない。荷物になっちまうでしょう。

気づいていた、僕のこころが

新しい何かを求めはじめていることを。

夜の匂いに変わったら、進む支度をはじめよう。

奇跡はいらない。踏み出せなくなるでしょう。

そういえば、君が泣くのを見たことなかったな。

そんなこと考えてたら、そりゃ日も暮れるよな。

よそ見してけつまずいても、今さらだ。振り向くことなかれ!

茜色に染まったら、次の言葉をみつけよう。

奇跡は起きない。理由がないからね。

茜色に染まるから、今日も明日もその思い出も。

奇跡はいらない。荷物になっちまうでしょう。


2.WARP

作詞:三島想平
作曲:cinema staff

高速道路沿いに広がる街にはもう用が無くなった。

ガスのにおいにも飽きた。

君はすこし華奢な身体で、僕の声にうなずいていた。

それなら、これから起こるドラマを車の鍵に託して、

このまま知らない国へ行こう。

誰にもばれないうちに行こう。

仕掛けるタイミングを密かに図ってる。

物音ひとつ立てず、今かと狙ってる。

どうしましょ、と囁く君が闇の中で怪しく笑う。おおいに結構!

12時の鐘を合図に車に飛び乗ったなら、

このまま知らない国へ行こう。

なおさら速度は上げていけ。

繋がることの無かった手と手を重ね合わせて、

このまま知らない国へ行こう。

誰にもばれないうちに行こう。

このままふたりの国へ行こう。

それなら速度は最高で、僕と行こう。


3.さよなら、メルツ

作詞:三島想平
作曲:cinema staff

目隠しをされたまま、どこに行くのかと訪ねようと返事はない。

目隠しを外されて、その重い口を割って言った。

この世の終わりと。白い笑みを浮かべ。

そこには何もなかった、闇以外は。

もう僕は二度と嘘をつけない。舌を抜かれちまったこの喉では。

もう僕は二度とたどり着けない。あなたのもとへは。

彼は言った。過去などいらない。形がないのにどうしてさ?

罪を重ねた僕は、その先に夢をみる。

そこには何もなかった気がしていた。

闇に慣れた目でいま見つめよう。

もう僕は二度と海に行けない。きつく縛られちゃったこの脚では。

もう僕は二度とたどり着けない。あなたのもとへは。

僕らの最後の言葉。

「おはよう、そしてさよなら、かもめよ。また会えるといいね」


4.her method

作詞:三島想平
作曲:cinema staff

古いタイプライターの音が響いた。

雑に脱いだカーディガンに染み付く煙草の

ニコチンも銘柄も分からないふりをして。

寒くなる部屋の中、ラジオの音。

知らない、知らないの。

彼女の方法論を聴いた。

「後悔なんて意味のないことで、単細胞が生き残っていく、

そんなもんさ」と笑っていたんだ。

黒いサイドワインダーの模型を手にして

血みたいなワインを飲み続けている。

「くだらない」つぶやいて、同じことを繰り返す。

朝も無い、昼も無い、夜も無いし、いらないの。

彼女の人生観を聴いた。

「懺悔なんて意味のないことって何万回と偉人達が言ってた、

そんなもんさ」と笑っていたんだ。

言っていたんだ…。


5.warszawa

作詞:三島想平
作曲:cinema staff

ワルシャワの牢獄を抜けたら、たいまつの火を消して、

ゆっくりと目を開けたのにまだ迷いの森の中だった。

僕らは悪夢を見ていたみたいに汗をかいて、

大蛇の怪物を手なずけた老人と共に歩くよ。

つないだ手が白く冷たくなった。

いま彼女は目を細め、笑ったのさ。

傘もさせないままで、いけにえの祭壇へ。

教祖はもう黙っていられない様子でさ、

呪文を唱えだした。

明日はわが身の僕らは誰も彼女を救えない。

いま彼女は目を伏せて「生きたい」という。

雨はやまないままで、いけにえの祭壇へ。


6.小説家

作詞:三島想平
作曲:cinema staff

故郷には雪がちらついていると聞いた。

僕はと言えばまだ暗い部屋の中。

筆を止める、は迷いか否か。いつかの幻のせいか。

情けないとも分かっちゃいるが、

身体は眠ったまま動かない。動きたい、動けない。

最終形を無くしたストーリー。

そんなものが見たい奴は当然いないな。

故郷に積もった雪はすぐ溶けたらしい。

僕はと言えばもう覚悟をきめて、捨てること、残すことを考えていた。

最終形を望んだ向こうにかなしみが残ってもしょうがないな。

完成形を目指したストーリー。

拾い集めた原稿と汚れたこの手で。

最終形を無くしたストーリー。

そんなものが見たい奴は当然いないな。

完成形をめざしたストーリー。

雪がほんの少し積もる街の話。


7.salvage me

作詞:三島想平
作曲:cinema staff

音の無い静かな公園で、僕は少し考え事をしている。

家に帰る道を急がないのは、夜が来ることを恐れた人。

珍しく晴れた梅雨の空だ。

青色のブランコに座って晩御飯を待っているのは、子供の手を握る人。

花壇には大きなあじさいと、その合間、縫って生える雑草。

うつむいたまま煙草を吸う人。紛れもない僕のこと。

日が落ちる。

映画みたいに輝いた夕焼けに身を任せて、このまま溶けてしまいたいよ。

許すこと、許すべきでないこと。焦ること、焦らなくていいこと。

その全てはどうでもいいこと。早く捨ててしまおうか。

顔を上げる。

映画みたいに輝いた夕焼けが目に染みたって、夕焼けに責められたって、

夕焼けに身を任せて、このまま溶けてしまいたいよ。

点と線と面が産まれていく。それはとても綺麗で素敵だね。

日が落ちる。

映画みたいに輝いた夕焼けに身を任せて。

顔を上げる。

映画みたいに輝いた夕焼けが目に染みたって、夕焼けに責められたって、

夕焼けに身を任せて、このまま溶けてしまいたいよ。